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1スレ目 101-104 おねがい(堂上×笠原) 一戦終わって、隣でくったりと身体を横たえていたる恋人の頭をゆっくり撫でていると、 恋人―笠原郁は突然がばっと上体を起こした。 「教官!!あの、教官の…、その、アレを口でしてもいいですか?」 「…はあ?急になにを言ってるんだ。おまえは」 「だって、いっっつも教官にイロイロされるばかりで、負けっぱなしで悔しいんですっ!」 「バカか貴様。勝ち負けじゃないだろう、そんなこと」 「わかった、負けるのが悔しいんですね?」 「はあ?!誰が負けるってんだ!?」 「じゃあ、了承してくれるんですか?」 「っ……歯は立てるなよ。それから無理だと思ったら、すぐにやめていいからな」 「はいっ」 …ん…チュ…んん…ぁん……んぁ…ん……… 「もう、いいぞ…」 「んん…んぁ、え?」 問うように見上げる瞳が濡れていて、色っぽい。この表情は初めてだ。 「もうやめていい」 そう言うと表情が変わった。 ―逃げるんですか? そう、目が語っている。口も手も動きを止めないのは、続行の意思を示している。 初めてで口で受け止めるのはかわいそうだろうと助け舟を出したのに、 余計に頑なにさせてしまった。 ―仕方ないか…言っても聞かないだろうしな 動く頭に片手を伸ばし、髪に指を絡める。 「…んう」 笠原は苦い表情をして、口の中にたまったモノを飲み込んだ。 「馬鹿っ!!飲まなくていいんだっ」 といってティッシュを大量に手渡したが、遅かったようでそれで口を押さえている。 「でも、飲み込んだほうが男の人はうれしいんですよね?」 ―そんないらん知識をどこで覚えた!? 「…少なくとも俺は、おまえに無理はさせたくないし、つらそうな顔は見たくない。不味いだろ?」 「うーん、美味しくは…ないですね」 「口、ゆすいでこい」 こくんとうなずいて、手近にあったシャツを羽織ると笠原は洗面所に向かった。 ―やっぱり、俺が一から教えてやればよかったな… 懸命に尽くしてくれようとする姿は愛しい反面、なにもそんなにあわてて覚えなくても、とも思う。 これまでに不満があったどころか十分満足しているし、少しずつ受け入れてくれるのがうれしかった。 ―ゆっくり教え込みたいところだが…どう教えたもんだか 洗面所から戻ってきた笠原はシャツを羽織ったまま、ベットにあがってきた。 「大丈夫か?」 「はい、もう大丈夫です。ね、教官?気持ちよかったですか?」 「………ああ」 「よかったぁ、喜んでもらえて」 会心の笑みを浮かべる笠原の頭をくしゃりと撫でた。 「まあ、技術的には及第点ってとこだがな」 「えぇぇっ、合格じゃないんですか?」 「まだまだ、だ」 ―その初々しいところがかえってよかった、なんて言ってやるものか 「んー、でも出たからあたしの勝ちですよね?」 堂上教官は、なんだか人の悪い笑みを浮かべてこう言った。 「笠原、1ゲーム取ったからといって試合に勝ったというわけではないだろう?」 「え、1ゲームって…」 「まあ、仮にも教官と呼ばれている俺が、負けたままで終わるわけにはいかんしなぁ?」 「なにそれ、ちょっ、んんっ…」 深く深く、ねちっこく口付けされながらあたしは負けず嫌いの教官に押し倒されてしまった。 ―もう、この、クソ教官っ!! ―――ほんと、しかたのない人だなぁ 思わず顔が笑ってしまった。
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1スレ目 849-850 水槽の中にいるみたい。ふと目覚めて郁が最初に思ったのはそんなことだった。 あれ?ここどこ? ぱっと身体を起こす。隣に眠っているのは、堂上教官。 その瞬間、昨夜のことを思い出した。そうだ、初めてお泊りしたんだった。 同時にあんなことやこんなことをしたのも思い出し、一人で顔を赤くする。 水槽の中みたいだと思ったのは、カーテン越しの光のせいだった。朝焼けの色がカーテンを通過して、薄紫っぽい色になっている。 やっと本当に目が覚めた郁は、眠る堂上の顔をまじまじとみつめる。 普段と違う、無防備な顔。この人があたしの大好きな人なんだ。改めてそう思うと、やっぱり頬に血が上ってくる。 意外と睫毛が長い。指先で頬に触れると、すこしザラザラする。ヒゲのせいだ。 と、堂上が「ん…」という声を出し、寝返りを打った。郁の心臓が爆発しそうになる。いや、別に悪いことなんかしてないんだけど。 浴衣がはだけているせいで、昨日自分がつけた歯型が見えた。 うわー。痛いよ、これ。いったい、どれだけの時間噛んでたんだろ。 歯型に、そっと唇を当ててみる。 ごめんなさい。痛かったですよね。舐めたらすこしは治りが早い?でも起きちゃうかな。 また、堂上の身体がぴくりと動き、郁は身を縮める。だから、悪いことなんかしてないってのに! 上掛けの上に出ていた腕を中に押し込むつもりで持ち上げると、お、重い。こんなに腕って重かった?ていうか、あたし、教官の身体肩にかついだことあったよね?あれって、火事場の馬鹿力だった? 無理に肘を曲げるとやっぱり目を覚ますだろうな。あきらめて、腕をそっと下ろす。その代わりみたいに、腕と手を観察する。 腕、硬いなあ。筋肉の質がやっぱり女のあたしとは違う。 二の腕から、手首まで、そっと指先で辿ってみる。どんなに訓練しても力で互角になんかなれない。部下としては悲しむべきことかな。でも、あたしが絶対に敵わないことが嬉しくもある。 軽く曲げられた指を伸ばして、自分の手を重ねてみる。繋いだことは何度もあったのに、こうやって大きさを比べてみたことってなかったな。 背はあたしのほうが高いのに、手は教官のほうがずっと大きい。大きくて、指も太くて、長い。 いつも頭に置いてくれる手。それから、昨夜は…。だめだって!なに考えてるんだ、あたし! いちいちそんなこと想像してたら、これからまともに教官のこと見られないじゃん! はあ、とちいさくため息をつく。寝よう。教官が起きるまでこうやって眺めてるわけにもいかないし。 これでおしまい、のつもりで眠る教官の唇に、自分の唇をそっと重ねた。そして離そうとした、そのとき。 がしっと頭が押さえられ、目と目が合った。 うっそー!!起きてたぁああああ!!! 合わせたままの唇から、舌が入り込んできた。逃げられない。そのまま長く深く激しいキスを続けられる。抵抗なんてできない。 やっと唇が離されたときには、もう息が上がっている。 「い、いつから…気づいて、たん、ですか…」 「寝返り打ったときから」 「それって、ずいぶん前からじゃないですかー!!!」 真っ赤になって抗議する郁をくるんと回して背中をベッドに押し付けながら、堂上は言った。 「観察するのは楽しかったか?…じゃあ、今度は俺の番だ」 「ええええええ!?だだだだめですよっ!!!!」 「だめじゃないだろ。このままじゃ不公平だろうが」 言いながら、堂上の手は郁の浴衣の紐を解いた。そして浴衣の前を開きながら、耳元で囁く。 「今度は噛むなよ」 「か、観察するだけじゃな!…」 郁のセリフは途中で堂上に吸い取られた。 結局チェックアウトは延長してもらうことになったとか。
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1スレ目 584-590 その2 『夢の中で、君は』 絶品と言われる食事もあまり喉を通らないまま終了し、部屋へと向う算段になった。 ここまで来てしまってはもう逃げることは許されない。今晩は寝られないけれど仕方ない、郁はそう腹を括った。 ドアを閉めると同時に後ろから抱きしめられた。首筋に堂上の唇が這うのが分かる。 耳朶を軽く噛まれ、郁は思わず小さく声をあげた。 くるんと身体を回転させられて堂上のほうを向かせられる。と、腰と首を引き寄せられて唇を合わせた。 そういえばキスも久しぶりだな、などと思っていたとき、舌が入り込んできた。 優しいけど激しい舌は、郁が応答することを望んでいるように絡めてくる。郁も慣れないながらも反応する。 「……んっ……ふっ」 声を堪えるようとすればするほど唇端から喘ぎに似た吐息が漏れ、絡めあう舌と混ざり合う唾液が淫靡な音を奏でてゆく。 反則とも思える舌使いをされた上に、堂上の右手は郁の胸を揉みしだき始めている。 郁の膝は限界を迎えてガクガクと震え始めた。 それに気付いた堂上は郁を膝から掬って抱き上げると、ベッドまで運んで下ろした。 顔の横に両手を付かれ、真剣な眼差しで見下ろされる。その様子に居た堪れなくなった郁が先に口を開いた。 「ふ、服が皺に」 「すぐ脱ぐから気にするな」 「シャ、シャワーは」 「必要ない」 言い放つと堂上が再び口付けてくる。さっきと同様に荒々しく唇を塞がれ、息をすることすら憚られるような舌で蹂躙される。 「……ぅんっ……くふっ……」 自分の吐息がまるで喘ぎ声のように響き渡る。いや、実際堂上の舌に感じ始めているのは紛れもない事実だ。 キスに飽きた唇が、今度は首にまわる。郁が感じる筋沿いを攻め立てるように、唇と舌が蠢く。 時折、耳を噛まれたり熱い息を吹き掛けられ、郁は気持ちよさから全身を震わせてしまう。 堂上の手は器用に郁の衣服を剥がして行き、あっという間に郁を下着姿に変えた。 「きょ、教官っ……灯り、灯り消してください……」 今はまだ明るい場所で全てを見られたことはなかった。何度も身体を重ねてはいるが、やはりまだ恥ずかしさが先立ってしまう。 郁にとっては、「その行為は暗い場所で」がいまだデフォルトだ。 しかし堂上はそれを聞こえなかったものとしたのか、ベッドサイドにある調光スイッチには目もくれない。 「……教官っ……暗くしてくださ………んんっ」 再度嘆願した声は、途中で封じられた。何度も口づけて郁の喉を殺しにかかる堂上の唇。 ひとしきり郁を味わったあと、いつものように真っ直ぐな視線で堂上が口を開く。 「……お前の頼みは聴かない」 「……でも、まだ恥ずかし」 「全部見せろ」 そのセリフと同時に、郁は上半身から全てを剥がされた。 ささやかな胸を捏ねるように揉まれ、その頂は口に含まれては舌で転がされていく。 明るい部屋で、全てを曝け出されていく恥ずかしさと言ったらなかった。 それでなくても女性としての魅力には程遠い体型の自分なのだ。それが分かっているからこそ、灯りを消してくれるように言ったのに。 なんの羞恥プレイですか、これ。 そんな冗談も脳裏を掠めたが、口に出せるような余裕は郁にはなかった。 執拗に胸を愛撫する堂上の舌と歯と指は、郁の身体の芯までを悦ばせる術を知っていた。乳首を軽く噛んでは甘く吸い上げる。その度に、郁は小さな嬌声をあげるのだ。 「やっ……んっ…きょ…かんっ…」 胸を揉む間にも腰をなぞることを忘れない堂上の手が、郁のショーツに伸びる。 郁のそこが既に濡れそぼっていることは十分承知していた。さっきから、郁が腰をもぞもぞと所在無げに揺り動かしていたから。実際指を這わせると、布の上からでも判るくらいだ。 「――あっ、だめ、きょうか――ー」 郁が咄嗟に止めようとする前に、堂上の指が下着の中へ入り込んだ。くちゅ、といやらしい音を立てて、そこは堂上を招き入れる。 「んんっ」 熱くて柔らかくて艶めかしいその中を指で玩ぶたびに、郁は悦びの声をあげる。 「ここだろ?」 郁の一番いい場所は、指が覚えている。そこを探し当てて指の腹で擦り上げると、 「―――ああっっ」 さっきより一際大きな声で啼く。その声が聞きたかった、と堂上は内心で呟いた。3ヶ月もお預け食らわせられたのだ、このくらいの意地悪は許されるはずだ。 もう片方の手でするりと郁のショーツを取り払うと、堂上は郁の秘部へと顔を寄せた。 そうされた側の郁はもうパニックだった。堂上がこれからしようとしている行為は、郁の限界を超える羞恥の絶頂だ。 必死で抵抗してみるものの、中に収まっている指の動きがそれを許してくれなかった。堂上がそこを擦り上げるたびに、郁の理性が削がれていくのだ。 「―――やあっ……み、見ないでくださ」 郁の声を無視して、愛液で淫靡に光るそこに舌を這わすと、苦くて甘い味が口中に広がる。 堂上は溢れ出る愛液を舌で掬うと、上にある小さな突起へと伸ばした。既に充血して膨らんだその突起を軽く吸うと、郁の身 体がビクンと跳ねる。 「――いや、――んんっ、ダメで……ああああんっ」 突起を吸うたびに、郁の中はキュッと指を締め付ける。適度な強さでその行為を繰り返してやると、郁の膝が戦慄くように震えだした。この予兆は。 堂上はさっきよりもやや強めに指で擦り、突起を吸い出した。 「あああっ―――教官っ、……だめぇっ―――」 ひときわ大きな声で啼くと、郁が一気に脱力したのが分かった。中はその逆に、指をキュンキュンと締めて来る。 蠢く中の余韻に浸っている間もなく指を抜き、堂上は自分の衣服を素早く脱ぎ捨てて、避妊具を自分に被せた。 ぐったりと呼吸を整えている郁に覆いかぶさると、まだ濡れている郁にあてがう。そうされた郁の方は驚いて抵抗を試みた。が、 「――ちょっ、待っ……教官、あたし、まだ」 言い終わらないうちに、勢い良く郁の中へと挿入していく。 「あああんっ」 絶頂の余韻はまだ残っていた。いつもよりキツめの中は、堂上をこれでもかと締め付けてくる。 3ヶ月ぶりの自分としては、どのくらい持たせられるか甚だ自信はなかったが、一度イカせている郁を再度登り詰めさせるのはそんなに困難じゃないだろうと予想は出来た。 いつも通りゆっくりとした動作から始める。さっきまでの激しい愛撫とは対極的な動きが、郁を焦れさせた。 自分から強請るように腰を押し付けてくる様子に、意地悪心がもたげだす。 「どうした?……腰が動いてるぞ」 言葉で攻めてみたことは無かったが、郁が締めて来たところを見るとこれも有効かもしれない。 「う、動いてなんてっ」 反論してみるものの、意思を失った腰が堂上の動きを求めていることは明らかだった。 「激しくしてほしいのか?」 「そ、そんなこと、無いですっ」 郁の反論は既に肯定だ。堂上は腰に力を溜めて郁の奥を一突きした。その途端、郁の身体が震えたのが伝わる。やはり、もう一度イキたがっていることは明白だ。 「もう一度、イクか?」 「やぁっ……堂上教官っ……意地悪っ……」 「意地悪はどっちだ?さんざん焦らされたのは、……俺のほうだと思ってたが?」 「―――そ、それは―――ああっ」 言い訳をしようとした矢先、再度奥を一思いに突かれ、郁の理性は吹っ飛んだ。 「教官っ―――イカせてくださっ―――もう、欲し……」 『欲しい』とは最後まで言えなかった。言葉の途中で、堂上の突き上げが激しくなったからだ。 熱い杭が打ち込まれるような感覚が、郁の身体を支配する。その感覚は堂上の動きが激しさを増す程に郁を虜にしていく。 結合した部分からは、粘着質な音と肌がぶつかる音が響く。いやらしく響く音は、耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしいもののはずなのに、郁にはどうすることもできないのだ。その音が、郁が堂上を誰よりも求めている証拠なのだから。 貫かれる度に最奥にもたらされる鈍い痛みにも似た快感が、徐々に頂きへと導き出す。 「あっ――だめ、……きょう、かんっ……あ、たしっ―――」 郁の言葉を聞くやいなや、堂上の動きは更に早まった。そして一気に郁は登り詰める。 「だめっ……ああっ!………――――!!」 先ほどと同様に脱力すると、心地よい疲れが郁を襲ってきた。 だめだ、このままだと眠ってしまう。 この期に及んで寝顔を見られる恥辱と闘おうとした矢先、堂上が一度抜いてから郁の体制をごろんとひっくり返した。 腰を持ち上げられて、立ち膝にさせられる。 ―――え? 声にならない疑問は、次の瞬間に答えになる。 あろうことか堂上は、絶頂を迎えたばかりの郁を後ろから再度貫いたのだ。 「やぁっ!教官っ!あたしっ――――」 「俺はまだだぞ」 「そ、んなっ…だって、無理っ………ああああんんっ!」 それでなくてももう既に2回も迎えている。これ以上は無理だというのに、堂上の動きは容赦がなかった。 「俺はイカせて貰えないのか?」 「だってっ――ああっ!―――これ以上はっ…あたしっ…うううんんっっ!」 ずぶずぶと出し入れされ、さっき打ち抜かれている場所とは違う場所を攻められる。またも襲ってくる、あの波。 ―――ああ、あたしまたイッちゃう――― 絶頂の余韻の最中に、また絶頂を迎えたのは初めてのことだった。 そして、アルコールの力を借りずに意識を失ったことも、初めてのこととなった。 「めちゃくちゃ可愛いんですってね、教官の寝顔」 業務中に話しかけられたと思ったら、柴崎が何かを含んだような表情で近づいてくる。 なんだそりゃ。誰が言ったんだ。 言おうとしたことが顔に出たのか、柴崎は訊く前に悪びれもせずに答える。 「笠原がそう言ってました」 コイツラが普段どんな話をしているのか、想像が出来ない。きっと、俺のような男はからかいの種になっているんだろうと思うと、面白くないのも当たり前だった。 「知るか。自分の寝顔なんて見たことないからな」 不機嫌そうに答えると、柴崎が待ってましたと言わんばかりに堂上の答えを受け取った。 「そう、それなんですよ」 「何がだ」 「今回の笠原の悩みです」 「はぁ?」 自分の寝顔が可愛くないと思い込んでいる、だから寝顔を見られるような環境を作りたくない、故に教官ともお泊りなどできない。これが郁の悩みの種明かしだったことを、柴崎から教えられた。 「大変だったんですよー。すっごくいい夢見てたのに叩き起こされて」 その所為で迷惑を蒙ったことを声高に言う柴崎をよそに、堂上は呆れるのを通り越して落胆している。 「アイツは……どこまでアホウなんだ」 「だから、言ってやってくださいね、あの子の寝顔がすっごく可愛いってこと」 「んなこと、とっくに知っている」 「でしょうねー。でも、毎日拝めるのは今のところ私だけですからね」 「なんだそりゃ」 「同室の特権」 堂上をからかうことに成功したことに満足が行ったのか、見事にウインクを決めたかと思うと柴崎は足早に駆けて行く。その途中でこちらを振り返り、 「今度ご馳走してくださいねー」 と恩を着せることも忘れなかった。 失神してしまった郁に布団をかけてやりながら、堂上は今回の騒動を思い返していた。 寝顔のことを気にするなんてコイツらしいといえばそれまでなのだが、その所為で我慢させられていたのかと思うと、意地悪してやりたくなるのは許容範囲だろう。 流石に失神させてしまったのは悪かったと思うが、帰りたくないと思わせるくらいに疲れさせてやろうと思ったことは否定しない。 郁の寝顔は、無防備でその分とても無邪気だった。 時々眠りながら微笑んでいるときがある。そんな時、自分が夢に出ていればいい、と思う。 「そうだ」 ふと、ひとりごちてズボンのポケットから機種変更したばかりの携帯電話を取り出した。 カメラモードに切り替えて、眠る郁を画面に収めた。 柴崎め。これで俺も毎日拝めるぞ。 初めて郁を被写体にして撮った写真同様に、郁の寝顔は深いフォルダに格納されることとなった。 もちろん、幸せそうに眠っている郁は、まさか堂上が自分の寝顔を撮ったなどとは、夢にも思ってはいない。 了
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【ミリマスSS】このみ「ん…あんっ…」P「ここがいいんですか?」 執筆開始日時 2014/08/09 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407521994/ 概要 このみ「そこっ…いい…もっとして…んっ」 P「どうですかこのみさん。気持ちいいでしょう?」 このみ「うん…こんなの初めて…っ」 小鳥(ピ、ピヨおおおおおお!?) タグ ^音無小鳥 ^馬場このみ ^百瀬莉緒 まとめサイト えすえす えすえすMode エレファント速報 ひとよにちゃんねる ポチッとSS!! SSまとめ SSウィーバー SSちゃんねる SSびより SSマンション SS 森きのこ!
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2スレ目 378-384 予定よりも随分遅くなっていたが、基地に近づくに連れてどちらともなく自然と歩みが遅くなった。 ついさっきまで今日観た映画の話や子供の頃の話で盛り上がっていたのに、 いつの間にか当たり障りのない会話に流れて途切れがちになり、結局今は無言だ。 喧嘩をした訳でも気まずい訳でもなく、名残惜しさに口をつぐんでしまうだけだ。 恋人から上官と部下へ。その切り替えのためにいつの頃からかこんな時間が必要になっていた。 すっぱりと切り替えが出来るほど浅い付き合いではないし、かといって安定した関係でもない。 基地に近づくにつれ、色々な感情が混ざり合って、かえって無表情になってしまう。 上官と部下としては阿吽の呼吸でも、恋人としてはまだ互いにおっかなびっくりだ。 寮とはいえ、隊内のヒエラルキーはそのまま寮のヒエラルキーに直結している。 正月明け早々の泥酔者居座り事件をきっかけに「プライベートで好きな女とイチャついて何が悪い!」と居直りはしたが、 結局のところ寮は基地内だ。きっぱりとプライベートであるとは断言できない。 だから郁を呼び出す時は出来る限り素っ気なく呼び出し、外出した時も寮の玄関の灯りが見える場所まで戻ったら、堂上は郁の手を離す。 公私混同をしないために堂上が密かに決めたルールだ。郁も言外に理解してそれに従っていた。 だがそれは建前の話。本音を言えば恋人としての態度をこれ見よがしに見せ付けて、 近頃になって郁に熱い視線を送り始めた不埒な輩どもをまとめて牽制したいところだ。 別に隠しているつもりではなかったが、堂上復帰の際に互いに自然と公私のけじめをつけたことで 二人が恋人同士になった事に気付かない者も少なくなかった。特に噂話に疎い特殊部隊外に所属するの男子隊員は。 堂上と付き合い始めて元来の愛らしさを覗かせるようになった郁は素直に可愛かったが、余計な視線まで集めてしまったのは苦い。 おかげで苛立つ事も増えた訳だが、自分が決めた事に文句を言っても仕方がない。仕方はないが、腹立たしい。 考えあぐねた末の妥協策として、不埒な輩は片っ端から絞め落とすことに決めた。 気さくな警衛係から「相変わらずお熱いねー」と冷やかされながら、寮までの道を出来るだけゆっくりと歩いた。 ほどなくして木々の間から寮の玄関が見え隠れする。腕時計を見ると予定よりも遅くはなったが、門限にはまだ余裕があった。 そういや洗濯するもんがあったなと所帯じみたことを頭の隅で考えながら、甘い余韻を断ち切ろうと無意識に姿勢を正した。 だがいつもなら手を離すタイミングに来て不意に郁が立ち止まった。手を強く握られ、堂上は郁を振り返る。 「郁?」 郁は無意識に手を離すことを拒絶し、その場にぼんやりと立ちすくんでいた。 不可解な行動に戸惑ったが、すぐに郁が自分の唇を郁が注視していること気が付いた。 あ、と言葉に出しかけて止めた。その視線の意味に気が付かないほど鈍くはない。 思わず手を握り返すと、郁が我に返った。焦点を取り戻した視線がぶつかると、郁は途端に顔を赤くして俯いた。 野放図を絵に描いたような普段の郁とは比べようもないほどの初々しさだ。その仕草に堂上の息がぐっと詰まる。 この、バカ!もう半年も経つんだぞ。ガキじゃあるまいし、こっちが恥ずかしいわ!頬なんぞ染めやがって! こっちがどれだけ色んな意味で我慢しようとしてるか判ってるのか?!少しは男の生態を理解しろ! しかし心の中で毒づく堂上の顔も熱を帯びていて、耳まで真っ赤になっていた。 期待と胸を突くような甘酸っぱい想いに歯噛みする。ガキか、俺は。 言いたいことは色々あったが、あえて沈黙を貫いた。そのまましばしの無言。結論を郁に委ねたのはせめてもの意趣返しだ。 照れ隠しの仏頂面で身構えた堂上を前に、ようやく郁が遠慮がちにあの、と口を開いた。 「ちょっとだけ…お散歩とかしませんか?」 俯いたまま上目遣いで堂上を覗う。堂上よりも背の高い郁が無意識に少しでも女の子らしく振舞おうとする時の癖だ。 今更だ、バカ。と思う反面、その仕草や自分を気遣う健気さが愛しいと思う自分はすでに病気だ。 だがそれを悟らせるのも癪なので、素っ気なく「少しだぞ」と言い置いて、寮の灯りに背を向けた。 外灯と外灯の間に射す深い夜の谷間、植え込みの更に奥の建物の影に堂上は郁を引き込んだ。 壁に背中を押し付けられた郁の手からバッグがすとんと落ち、潤んだ瞳で堂上を見つめている。 抱きしめて、押さえ込むように郁の頭を撫でると、郁の身体から力が抜けてそのまま堂上に縋り付いた。 さっきの蕩けたような視線の意味が間違いはなかったと感じると共に、逸る気分に囚われる。郁からの誘いは初めてだった。 いつもはこちらからリードするが、どうする?郁に任せてみるか?郁の頭を撫でながら考えていたら、 おずおずとためらいながら郁が動いた。軽く触れるだけのキスを一つ。それから郁はじっと堂上を見つめた。 この先は堂上に任せると言うことだろうか。だが折角の誘いなら、素直に乗るよりは少し焦らしてみたい。 あえて軽いキスを返すと、郁は高まり始めた身体中の熱から逃れるように艶めいた息を吐いた。 互いの視線を結んだまま唇を軽く噛んでやると、郁の口から思いがけないほど色っぽい喘ぎ声が漏れる。 くそ、処女のくせにエロい声出しやがって。 焦らしたつもりが煽られただけだ。堪えきれず噛み付くように口付けて、舌を絡み合わせた。 キスの心地よさを教えたのは自分だが、数を重ねるごとに郁の反応は良くなっていた。 セックスはまだしていない。だからなのか、繰り返すごとにキスは深くなっていき、いつの間にか情事の様相だ。 キスがセックスの代償行為になっているのかもしれない。だが郁はそれに気がついていない。 セックスについては間違いなく「はじめて」であろう郁に対して事を急きたくなかったが、 キスがセックスの代償行為になっている現状、いくら朴念仁と皮肉られているとはいえ毎度こんな声を聞かせれては堪らない。 熱に浮かされたような視線の郁に、堂上は試されているような気分だ。気を抜けば郁に襲い掛かるかもしれない。 何か別のことをと思いつき、そうだ、と目の端に映ったものに意識を集中する。郁の頬に張り付いていた横髪。 少し邪魔そうだなと考えて、掻きあげて郁の耳にかけるように梳いた。が、その指の動きに反応するように郁の身体がビクっと震えた。 「んっ…ぁ」 堪え損ねた甘い声がはっきりと堂上の耳に届く。おい、待て笠原。マズイぞそれは。 わざわざ苗字呼びしたのは今にも消し飛んでしまいそうな自制心だったが、もう手遅れだ。 その証拠に待て待てと焦り始めた頭の片隅で、耳の裏が弱点なのかとしっかり記憶した自分がいる。 密着していた身体を慌ててずらす。堂上自身に起こりつつある身体の変化がばれたら流石に気まずい。色んな意味で。 左手を郁の頭に添えたまま、右手の指先で首筋をそっと撫でる。 触れている事を意識させないように、耳の裏に触れるタイミングで煽るように舌を絡ませた。 生暖かくざらっとした感触に弱い部分に触れられた刺激が重なって、郁の身体が弓なりに反った。 腰が引けた郁を逃がさぬように身体を支え、そのまま郁の背中のラインを確かめるようになぞると 堪りかねた郁が必死に声をかみ殺して熱い息を吐いた。 目尻に浮かんだ涙に僅かな罪悪感が芽生えたが、そのまま気付かない振りをした。 大事にしたい女のはずなのに、このままでは傷付けてでもその先まで求めてしまいそうだった。 もう自分では崩れた自制心を立て直すことが出来ない。郁がNOと言ってくれなければもう止められない。 大事にしたいのと同じくらい、確実に楔を打ち込んで逃げられないようにしたいとも思う。 好きな女とイチャついて何が悪い。恋人同士がやることやって何か問題でもあるのか。ずっとしたかったんだ、悪いか! ついに観念した堂上は郁の首筋に軽く歯を立て、郁が息を飲んだ瞬間にデニムのタイトスカートの裾から手を滑り込ませた。 起こったことに気がついているのか、それともまだキスの余韻の中なのか。 引き締まった太腿から内側に指を滑らせると、教官、と震える声で堂上を求め、郁は堂上の肩にしがみついた。 怯えてくれれば踏みとどまる事も出来たかもしれないが、これではまるで同意のサインだ。 太腿の内側に手を這わせ、熱を帯びた部分に触れぬように臀部まで撫で上げると、郁は喘ぎ声を必死に抑えながら更に強くしがみついた。 行き場のない熱をやり過ごす事も難しいのか、無意識に足をすり合わせて身動ぎする。触れなくてもそこが潤んでいる事くらい判る。 俺だけがこの先を求めている訳じゃないと思って良いんだな?声に出して訊ねる代わりに、堂上は郁の瞳を覗き込んだ。 それは二人の視線が絡み合った瞬間とほぼ同時に起こった。 暗闇の中、二人のいる場所からおよそ数十メートル先でがさりと木擦れの音がした。 即座に甘い余韻は掻き消え、堂上と郁は抱き合った姿勢のまま音も立てず植え込みの影に身を潜めた。 しばらくして腹立たしいほど呑気な鼻歌が耳に届き、二人の頭上を懐中電灯の灯りがかすめた。 灯りは影に潜んだ二人を捕らえる事無く、さっきまで二人が濃厚なキスを交わしていた空間を照らしだす。守衛の見回りだ。 守衛は植え込みを全く気にする様子もなく、やがて呑気な鼻歌は遠くへと消えた。 いくら二人が特殊部隊隊員とはいえ、あの程度の見回りでは侵入者が潜んでいたとしても全く気付かないかもしれない。 アイツ、減俸ものだな。いや、この場合はいちおう感謝しておくべきか。 守衛の気配が完全に消えたところで、堂上は大きなため息をつき、 それを合図に堂上に庇われるように身を縮ませていた郁の身体からふぅと力が抜けた。 「ドキドキしたー。今のちょっと危なかったですね」 先ほどのキスの余韻をまるで匂わせないサバサバとした郁の物言いが微妙に引っかかった。 「何の…」 「さっきの守衛さんですよ。でもあの人、ちょっと警備姿勢に問題ありますよね。まぁ見つからなくって良かったかな。えへ」 堂上の背中に冷たい汗が湧く。まさか――、まさかとは思うが、まさか…というか、やっぱりそうなのか?! 居た堪れない、男として居た堪れない。罪悪感と戦いながら、半ば腹を括って「そのつもり」で触れたっていうのに、 郁から見ればただ単純に「キス+α」で、それ以上については考えが及んでいなかったらしい。 「えへ」って何だー!散々良い声で鳴いて、煽るだけ煽った挙句それか?! 男心を弄りやがって!返せ、俺の葛藤を返せ!利子つけて返せ! と、さすがに声に出しては言わなかったが、脱力した堂上ががっくりと膝を付いたことは言うまでもない。 いや、こんなところでおっ始めるわけにもいかなかったから、待ったがかかって良かったと言えば良かったんだが。だが、なんだ。 気持ちは海底二万マイルに到達した堂上を尻目に、郁は立ち上がって堂上に笑いかけてきた。 「もうそろそろ門限ですよね。あ、やっばい!お風呂終わっちゃう!」 心なしか不自然なほど陽気に振舞う郁に対し、堂上は完全な仏頂面だ。 それにしたってホントに気付いてないのか?それはいくらなんでも無神経すぎやしないか? 気恥ずかしさと理不尽な憤りで行き場のなくなった感情の矛先は当然のように郁に向けられる。 堂上は無言で立ち上がり、そのまま郁に軽くゲンコツを食らわした。軽くのつもりだったが、ごちんと良い音が響いた。 「ぃったっ!何で?!今絶対殴るトコじゃないし!!折角ラブラブな雰囲気だったのに!」 「どこがどうラブラブだ!少しは俺の苦労も判れ!」 「え?あたし、なんかやらかしました?」 「もういい!うるさい黙れ喋るな!」 はっきりとしたのは、自分がした行為を激しく後悔したという事だ。笑顔の郁に罪悪感が胸を刺す。 もし仮に郁が行為に怯んで嘘をついたんだとしても、そうさせたのは独占欲で事を急いた自分に非があるような気がした。 どちらにしろもう迂闊に手は出せない。堂上は玄関で郁と別れて部屋に戻ると、柄にもなくへこんだ。 玄関で堂上と別れた郁は部屋へと向かう廊下を一人で歩いていた。 廊下はいつもよりも静まり返っているように感じられて、すれ違う人もいなかった。 静か過ぎて自分の心臓の音まではっきりと耳に届くようだ。 どくん、どくん、と少しずつ早まる鼓動に合わせて郁の歩みも少しずつ速まり、気付いた時には駆け出していた。 逸る気持ちに焦りながら部屋に駆け込むと、柴崎はお風呂にでも行っているのか部屋にいなかった。 後ろ手に閉めたドアにもたれかかり、そのままずるずるとへたり込んだ。頬も耳も、全身が熱くほてっている。 「あ…っぶなかったぁ…」 今日の「散歩」のおねだりは、郁にしては勇気を振り絞ったほうだ。 いつも寮の前までくると堂上はあっさりと手を離すから、それが悔しくて寂しくて、わがままを言った。 それに寮の中では恋人扱いしてもらえない。だから戻る前にどうしても甘い空気に浸りたくなった。 もっともっとと求めるうちに、まさかあそこまで濃密な空気になってしまうとは思わなかったが。 全身に堂上の指が辿った感触が郁の身体にリアルに残っていた。優しくて熱い。 堂上が触れた場所はくすぐったくて、それなのにすごく気持ちが良くて、そこに溺れそうになる自分が恥ずかしかった。 堂上の手が太腿に触れた瞬間下腹部が急に熱くなって、身体の奥からほんの少しだけ郁自身の熱が滲んだ。 それがなんだか判らないとカマトトぶる気は毛頭ないが、少し触れられただけだというのに、これは恥ずかしい。 元々堂上はスキンシップが多いほうだが、キスをする時に(それがどれほど激しかったとしても)触れてくる事は無かったから、 たまにはお触りされながらとかもありかなーとドキドキしながら考えた事は確かにあったけれど、現実は乙女回路を遙かに越えた。 あの時、熱を堪え切れなかった自分に堂上は気付いただろうか?もっと触って欲しいって言ったら幻滅された? 守衛の見回りで行為が中断された時、気持ち良くなっていた自分が急に恥ずかしくなって、その先を考えたら少し怖くもなって、 ベタ甘な空気を断ち切るように明るく振舞って誤魔化そうとしたけど、もしかしたらかなりわざとらしかったかもしれない。 ていうか、柴崎に借りた小説のみたいなあんな事やこんな事を想像してドキドキしたのはあたしだけで、 堂上教官はなんとも思ってなかったりして。あり得る、そのパターンはあるかも!支えようとして偶然触っちゃっただけとかで。 こっちが大騒ぎしてるのに、堂上教官に素で「何かあったのか?」とか言われたらへこむ。マジでかなりへこむ。 一人で空回りとかすっごい恥ずかしいんですけど!それよりも明日どんな顔して堂上教官と会えば良いの?! 柴崎が戻ってきたら相談…とか、そんな自分からネタ晒すようなマネできるかーっ! 真っ赤になった頬を膝にこすり付け、郁は空転する思考を抱えるようにうずくまった。 それから数週間後のバレンタイン、更に堂上をへこませる出来事が起こるのだが、それはまた別の話だ。
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1スレ目 584-590その2 夢の中で、君は 絶品と言われる食事もあまり喉を通らないまま終了し、部屋へと向う算段になった。 ここまで来てしまってはもう逃げることは許されない。 今晩は寝られないけれど仕方ない、郁はそう腹を括った。 ドアを閉めると同時に後ろから抱きしめられた。 首筋に堂上の唇が這うのが分かる。 耳朶を軽く噛まれ、郁は思わず小さく声をあげた。 くるんと身体を回転させられて堂上のほうを向かせられる。 と、腰と首を引き寄せられて唇を合わせた。 そういえばキスも久しぶりだな、などと思っていたとき、舌が入り込んできた。 優しいけど激しい舌は、郁が応答することを望んでいるように絡めてくる。 郁も慣れないながらも反応する。 「……んっ……ふっ」 声を堪えるようとすればするほど唇端から喘ぎに似た吐息が漏れ、絡めあう舌と混ざり合う唾液が淫靡な音を奏でてゆく。 反則とも思える舌使いをされた上に、堂上の右手は郁の胸を揉みしだき始めている。 郁の膝は限界を迎えてガクガクと震え始めた。 それに気付いた堂上は郁を膝から掬って抱き上げると、ベッドまで運んで下ろした。 顔の横に両手を付かれ、真剣な眼差しで見下ろされる。 その様子に居た堪れなくなった郁が先に口を開いた。 「ふ、服が皺に」 「すぐ脱ぐから気にするな」 「シャ、シャワーは」 「必要ない」 言い放つと堂上が再び口付けてくる。 さっきと同様に荒々しく唇を塞がれ、息をすることすら憚られるような舌で蹂躙される。 「……ぅんっ……くふっ……」 自分の吐息がまるで喘ぎ声のように響き渡る。 いや、実際堂上の舌に感じ始めているのは紛れもない事実だ。 キスに飽きた唇が、今度は首にまわる。 郁が感じる筋沿いを攻め立てるように、唇と舌が蠢く。 時折、耳を噛まれたり熱い息を吹き掛けられ、郁は気持ちよさから全身を震わせてしまう。 堂上の手は器用に郁の衣服を剥がして行き、あっという間に郁を下着姿に変えた。 「きょ、教官っ……灯り、灯り消してください……」 今はまだ明るい場所で全てを見られたことはなかった。 何度も身体を重ねてはいるが、やはりまだ恥ずかしさが先立ってしまう。 郁にとっては、「その行為は暗い場所で」がいまだデフォルトだ。 しかし堂上はそれを聞こえなかったものとしたのか、ベッドサイドにある調光スイッチには目もくれない。 「……教官っ……暗くしてくださ………んんっ」 再度嘆願した声は、途中で封じられた。 何度も口づけて郁の喉を殺しにかかる堂上の唇。 ひとしきり郁を味わったあと、いつものように真っ直ぐな視線で堂上が口を開く。 「……お前の頼みは聴かない」 「……でも、まだ恥ずかし」 「全部見せろ」 そのセリフと同時に、郁は上半身から全てを剥がされた。 ささやかな胸を捏ねるように揉まれ、その頂は口に含まれては舌で転がされていく。 明るい部屋で、全てを曝け出されていく恥ずかしさと言ったらなかった。 それでなくても女性としての魅力には程遠い体型の自分なのだ。 それが分かっているからこそ、灯りを消してくれるように言ったのに。 なんの羞恥プレイですか、これ。 そんな冗談も脳裏を掠めたが、口に出せるような余裕は郁にはなかった。 執拗に胸を愛撫する堂上の舌と歯と指は、郁の身体の芯までを悦ばせる術を知っていた。 乳首を軽く噛んでは甘く吸い上げる。 その度に、郁は小さな嬌声をあげるのだ。 「やっ……んっ…きょ…かんっ…」 胸を揉む間にも腰をなぞることを忘れない堂上の手が、郁のショーツに伸びる。 郁のそこが既に濡れそぼっていることは十分承知していた。 さっきから、郁が腰をもぞもぞと所在無げに揺り動かしていたから。 実際指を這わせると、布の上からでも判るくらいだ。 「――あっ、だめ、きょうか――ー」 郁が咄嗟に止めようとする前に、堂上の指が下着の中へ入り込んだ。 くちゅ、といやらしい音を立てて、そこは堂上を招き入れる。 「んんっ」 熱くて柔らかくて艶めかしいその中を指で玩ぶたびに、郁は悦びの声をあげる。 「ここだろ?」 郁の一番いい場所は、指が覚えている。 そこを探し当てて指の腹で擦り上げると、 「―――ああっっ」 さっきより一際大きな声で啼く。 その声が聞きたかった、と堂上は内心で呟いた。 3ヶ月もお預け食らわせられたのだ、このくらいの意地悪は許されるはずだ。 もう片方の手でするりと郁のショーツを取り払うと、堂上は郁の秘部へと顔を寄せた。 そうされた側の郁はもうパニックだった。 堂上がこれからしようとしている行為は、郁の限界を超える羞恥の絶頂だ。 必死で抵抗してみるものの、中に収まっている指の動きがそれを許してくれなかった。 堂上がそこを擦り上げるたびに、郁の理性 が削がれていくのだ。 「―――やあっ……み、見ないでくださ」 郁の声を無視して、愛液で淫靡に光るそこに舌を這わすと、苦くて甘い味が口中に広がる。 堂上は溢れ出る愛液を舌で掬うと、上にある小さな突起へと伸ばした。 既に充血して膨らんだその突起を軽く吸うと、郁の身体がビクンと跳ねる。 「――いや、――んんっ、ダメで……ああああんっ」 突起を吸うたびに、郁の中はキュッと指を締め付ける。 適度な強さでその行為を繰り返してやると、郁の膝が戦慄くように震えだ した。 この予兆は。 堂上はさっきよりもやや強めに指で擦り、突起を吸い出した。 「あああっ―――教官っ、……だめぇっ―――」 ひときわ大きな声で啼くと、郁が一気に脱力したのが分かった。 中はその逆に、指をキュンキュンと締めて来る。 蠢く中の余韻に浸っている間もなく指を抜き、堂上は自分の衣服を素早く脱ぎ捨てて、避妊具を自分に被せた。 ぐったりと呼吸を整えている郁に覆いかぶさると、まだ濡れている郁にあてがう。 そうされた郁の方は驚いて抵抗を試みた。 が、 「――ちょっ、待っ……教官、あたし、まだ」 言い終わらないうちに、勢い良く郁の中へと挿入していく。 「あああんっ」 絶頂の余韻はまだ残っていた。 いつもよりキツめの中は、堂上をこれでもかと締め付けてくる。 3ヶ月ぶりの自分としては、どのくらい持たせられるか甚だ自信はなかったが、一度イカせている郁を再度登り詰めさせるのはそんなに困難じゃないだろうと予想は出来た。 いつも通りゆっくりとした動作から始める。 さっきまでの激しい愛撫とは対極的な動きが、郁を焦れさせた。 自分から強請るように腰を押し付けてくる様子に、意地悪心がもたげだす。 「どうした?……腰が動いてるぞ」 言葉で攻めてみたことは無かったが、郁が締めて来たところを見るとこれも有効かもしれない。 「う、動いてなんてっ」 反論してみるものの、意思を失った腰が堂上の動きを求めていることは明らかだった。 「激しくしてほしいのか?」 「そ、そんなこと、無いですっ」 郁の反論は既に肯定だ。 堂上は腰に力を溜めて郁の奥を一突きした。 その途端、郁の身体が震えたのが伝わる。 やはり、もう一度イキたがっていることは明白だ。 「もう一度、イクか?」 「やぁっ……堂上教官っ……意地悪っ……」 「意地悪はどっちだ?さんざん焦らされたのは、……俺のほうだと思ってたが?」 「―――そ、それは―――ああっ」 言い訳をしようとした矢先、再度奥を一思いに突かれ、郁の理性は吹っ飛んだ。 「教官っ―――イカせてくださっ―――もう、欲し……」 『欲しい』とは最後まで言えなかった。 言葉の途中で、堂上の突き上げが激しくなったからだ。 熱い杭が打ち込まれるような感覚が、郁の身体を支配する。 その感覚は堂上の動きが激しさを増す程に郁を虜にしていく。 結合した部分からは、粘着質な音と肌がぶつかる音が響く。 いやらしく響く音は、耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしいもののはずなのに、郁にはどうすることもできないのだ。 その音が、郁が堂上を誰よりも求めている証拠なのだから。 貫かれる度に最奥にもたらされる鈍い痛みにも似た快感が、徐々に頂きへと導き出す。 「あっ――だめ、……きょう、かんっ……あ、たしっ―――」 郁の言葉を聞くやいなや、堂上の動きは更に早まった。 そして一気に郁は登り詰める。 「だめっ……ああっ!………――――!!」 先ほどと同様に脱力すると、心地よい疲れが郁を襲ってきた。 だめだ、このままだと眠ってしまう。 この期に及んで寝顔を見られる恥辱と闘おうとした矢先、堂上が一度抜いてから郁の体制をごろんとひっくり返した。 腰を持ち上げられて、立ち膝にさせられる。 ―――え? 声にならない疑問は、次の瞬間に答えになる。 あろうことか堂上は、絶頂を迎えたばかりの郁を後ろから再度貫いたのだ。 「やぁっ!教官っ!あたしっ――――」 「俺はまだだぞ」 「そ、んなっ…だって、無理っ………ああああんんっ!」 それでなくてももう既に2回も迎えている。 これ以上は無理だというのに、堂上の動きは容赦がなかった。 「俺はイカせて貰えないのか?」 「だってっ――ああっ!―――これ以上はっ…あたしっ…うううんんっっ!」 ずぶずぶと出し入れされ、さっき打ち抜かれている場所とは違う場所を攻められる。 またも襲ってくる、あの波。 ―――ああ、あたしまたイッちゃう――― 絶頂の余韻の最中に、また絶頂を迎えたのは初めてのことだった。 そして、アルコールの力を借りずに意識を失ったことも、初めてのこととなった。 「めちゃくちゃ可愛いんですってね、教官の寝顔」 業務中に話しかけられたと思ったら、柴崎が何かを含んだような表情で近づいてくる。 なんだそりゃ。 誰が言ったんだ。 言おうとしたことが顔に出たのか、柴崎は訊く前に悪びれもせずに答える。 「笠原がそう言ってました」 コイツラが普段どんな話をしているのか、想像が出来ない。 きっと、俺のような男はからかいの種になっているんだろうと思うと、面白くないのも当たり前だった。 「知るか。自分の寝顔なんて見たことないからな」 不機嫌そうに答えると、柴崎が待ってましたと言わんばかりに堂上の答えを受け取った。 「そう、それなんですよ」 「何がだ」 「今回の笠原の悩みです」 「はぁ?」 自分の寝顔が可愛くないと思い込んでいる、だから寝顔を見られるような環境を作りたくない、故に教官ともお泊りなどできない。 これが郁の悩みの種明かしだったことを、柴崎から教えられた。 「大変だったんですよー。すっごくいい夢見てたのに叩き起こされて」 その所為で迷惑を蒙ったことを声高に言う柴崎をよそに、堂上は呆れるのを通り越して落胆している。 「アイツは……どこまでアホウなんだ」 「だから、言ってやってくださいね、あの子の寝顔がすっごく可愛いってこと」 「んなこと、とっくに知っている」 「でしょうねー。でも、毎日拝めるのは今のところ私だけですからね」 「なんだそりゃ」 「同室の特権」 堂上をからかうことに成功したことに満足が行ったのか、見事にウインクを決めたかと思うと柴崎は足早に駆けて行く。 その途中でこちらを振り返り、 「今度ご馳走してくださいねー」 と恩を着せることも忘れなかった。 失神してしまった郁に布団をかけてやりながら、堂上は今回の騒動を思い返していた。 寝顔のことを気にするなんてコイツらしいといえばそれまでなのだが、その所為で我慢させられていたのかと思うと、意地悪してやりたくなるのは許容範囲だろう。 流石に失神させてしまったのは悪かったと思うが、帰りたくないと思わせるくらいに疲れさせてやろうと思ったことは否定しない。 郁の寝顔は、無防備でその分とても無邪気だった。 時々眠りながら微笑んでいるときがある。 そんな時、自分が夢に出ていればいい、と思う。 「そうだ」 ふと、ひとりごちてズボンのポケットから機種変更したばかりの携帯電話を取り出した。 カメラモードに切り替えて、眠る郁を画面に収めた。 柴崎め。 これで俺も毎日拝めるぞ。 初めて郁を被写体にして撮った写真同様に、郁の寝顔は深いフォルダに格納されることとなった。 もちろん、幸せそうに眠っている郁は、まさか堂上が自分の寝顔を撮ったなどとは、夢にも思ってはいない。 了
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1スレ目:37-39 17-19 の続き。 放課後の個人授業が1ヶ月になった頃、笠原の様子がおかしくなった。 業務後書庫で待っているくせに、引き寄せようとすると顔を背け、嫌々をする。 理由を聞いても答えないし、嫌なのかと聞いても首を振る。無理に顔を上げさせる と目を潤ませるから無理やり奪う。逃げ腰な舌を捕らえ、絡め、追い詰める。 空いている指で耳を攻め、首を撫ぜ、髪に指を差し入れる。 授業の成果は笠原だけに生まれたものではなくて、この一ヶ月で、堂上は笠原が 後頭部を撫ぜられることに極端に弱いことを知った。 笠原が「教えてください」と言って始まったこの授業は、まるで部活動かなにかの ようだった今までの方が異常で。 ────だから、むしろ、今の方が興奮する。 不毛な関係に、さらに堂上の胃が痛んだ。 「久しぶりに外に呑みに行かない?友人として相談に乗るよー」 週に数度、業務後小牧か堂上どちらかの部屋に集まっては何杯か引っ掛けることが 日課となっていたが、最近は「調子が悪い」と遠慮気味だった。それに、今日は昨 晩の夢見が悪かった所為で一日中気分が悪く早く引きこもりたい気持ちでいっぱい だ。 しかし、おもむろに使われた「相談」という言葉が気になった。 「なんかさ、最近調子悪そうじゃない?」 そんなつもりはなかったのだが、付き合いの長いこの友人には分かるほどには考え 込むことが多かったらしい。 「なんかおかしかったか」 「やー、なんとなく。最近付き合いも悪いしさ。それに、」 笠原さんとなんかあった? 相変わらず、目敏い友人である。 素面では語れないから駆けつけ三杯ならぬ熱燗三合を空け、すきっ腹に染み渡り、 ああこれは酔うな、あまりよくない酒になるな、と他人事のように感じた。 「なんだ、酔ってないと話せないこと?」 軽口も無視して本題に入る。もう限界なのかもしれない。 「キスの練習台にされてる」 「誰が?誰の?」 「俺が、王子様のキスの練習台にされてると言ってるんだ」 誰とは言わなかったものの、王子様という単語で合点が言っただろう。 馬鹿げていると分かっているが、これを言わないと話がすすまないからとりあえず 言ってみる。さて友人はどんな反応を返すのか。また、横隔膜が痙攣するまで笑う のか。 「笠原が言ったんだ、王子様に会いにいくから練習台になってくれ、と。何でキス なのかは俺にはわからんがな」 「…あっきれた。それ、素直に受けたわけ」 こちらの予想を裏切り、小牧は少しも笑わず、心底あきれた顔をしてため息をついた。 こちらはその正論に詰まる。 「しょうがないだろう! 俺は上官だし、」 今となっては何でそんなことを引き受けたか分からないから言い返す先が続かない。 「どう考えても全然筋が通ってないんだけど。普通キスなんて教えないし。 っていうか、分かった。一回断って、その後俺の名前とか引き合いに出されて逆上 したんでしょ、あんた」 付き合いの長さは伊達ではない。そこまで読むかお前は。 がっくりと項垂れる堂上に小牧は優しい追い討ちを掛けた。 「あのね、二人とも意地っ張りなんだからどっちかが折れないとどうにもならないよ? どっちかが折れるっていうなら、堂上が折れてやんなよ。大人なんだから」 「あとさ、普段だったら堂上が一番分かってると思うんだけど、なんか視野狭窄み たいだから言っとく。彼女 好きじゃない人にキス許せる子じゃないと思うんだけど、 違う?」 もし俺の名前出したとしたらさ、それって売り言葉に買い言葉みたいなもんだと思う んだよね。それに…、と続けた言葉は途中で消えたが、改めて問うことはしなかった。 正論好きのこの友人は、言うべき時には言うだろう。 正直一々もっともな友人の言が突き刺さる。しかしいつでも正論が吐けるこの友人 には本当に世話になった。そして今も。 ───よーく考えてみなよ、堂上教官。 酔った頭で考えれば考えるほど、昨夜の夢を思い出す。夢の中で肢体を投げ出す笠原の 身体を頭から追い払うように首を振り、堂上は杯を重ねた。 了
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1スレ目 554-562 「郁……」 甘い声が耳もとをくすぐる。 「し…柴崎、ねぇちょっと待ってって……」 あんまりに突然のルームメイトの豹変に、郁は焦って、密着していた柴崎の両肩をかるく押し返す形で抵抗した。 それでも、豊かなムネの感触は充分すぎるほどの存在感で。 ぐるぐると混乱する頭の中で、抑えがたい欲望が沸き起こってしまうのを認めざるを得なかった。 きっかけはほんの数分前のこと。 明日のデートの後に初めてのお泊りを控えた郁は、未知の体験になんとか覚悟を決めたもののやっぱりどうしてもどうしても不安がぬぐえず。 「ねぇ、下着はこのセットでいーかな?こっちは頑張りすぎな感じだし、かといってこれはそっけなさすぎで、教官のやる気を削いでもアレだし!!!」 と、下着の相談から入って、ついでにアレコレ初めての心得的なアドバイスを同室の柴崎から聞き出そうとした、…つもりだったのだけど。 ねぇ?あたしのものになりなさいよ。―――あんたが男ならあんたと付き合う――― 本気よ。 男じゃなくっても、別に良いか。って。 箍が外れてしまったんだから、もう仕方がないじゃない。 胸の奥が疼く。 このカタチの良い自慢のバストが、て冗談じゃなくて。 下着の相談をふられた柴崎は、一瞬真顔になった。 それから、ほんの少し傷ついた表情を浮かべたように見えたが、それは郁の気のせいだったかもしれない。 「明日は祝☆初体験、てわけねー」 パックをはがしてマッサージしていた手を休め、柴崎はからかうように言葉を返した。 「ちょ……やめてよ柴崎オヤジくさいなぁ」 「わざとよ。じゃ、万全を期して練習でもしときますか」 「………はっ?!」 郁が反論する間もなく、ふんわりと甘やかな香りが近づき、そして。 ――――そして状況は冒頭に戻る。 「教官はどんなふうにキスするの?」 5センチの距離で、芝崎が郁の目線を捉える。 この距離で彼女に見つめられて落ちなかったオトコなんていないのだけど、 それが純情乙女・茨城県産にも通じるのかどうかは別問題。 「どう、って……」 まじめに答えようとするなバカ。 照れてそらした顔が可愛いとか思ってしまうじゃない。 赤くなった顔は、堂上教官のことを思い出してるから? それとも。あたしとこうやって見つめあってるから、だと、ちょっとは期待してもいいのかしら。 女子寮の二人部屋。邪魔なんてさせない。 誰も、邪魔なんて出来ない。 「……んっっ…」 柴崎は、郁の唇を塞いだ。 「真面目に答えよーとしなくていいっつの」 それだけ言って、答える間を与えずにまた唇を合わせる。 眉根を寄せる郁も、拒もうとはしなかった。 力ならこの子の方がある。 嫌だったらすぐに拒めるはず。 しっとりと湿った舌で郁の歯列を探り、その奥の舌を絡めとる。 ふ、うっ……ん…っ 柴崎が唇と舌を使う合間に、小さな声が漏れた。 冷たかった唇は、互いの熱を移しあう。 甘い。可愛い。 (ずるい。やっぱりこんな郁、あの人に独り占めなんてさせてやらない――) 「やめっ…しばさ…は、ぁっ…」 「嫌なの?」 長い口づけの後、不意に真顔になって聞いた柴崎に郁は口ごもりつつ答えた。 「嫌っていうか、こんな……女同士だし。その…いくら柴崎でも、やっぱ変な気分になっちゃうし」 (なってよ。いくらでも。あたし相手じゃそんな気分になりたくないって?) そんな焦れた気分は、敢えて押し隠す。 だってそんなの自分らしくない。 「いーでしょ、べつに」 わざと軽く答えて、柴崎はにっこりと笑って見せた。 「女同士だし。気にすることじゃないわよ」 「そ…れは、ちょっと違う気が……」 「なーにー?あんたのダーリンはオンナノコ同士のコミュニケーションにまで口出しする野暮な男なわけ?」 「こ…みゅにけーしょん、なのかな…?」 「そーそー」 深く考えなさんな、と、柴崎はもう一度郁の身体にぴったり寄り添った。 彼女の耳もとでささやく。 自分の声が、とびきり甘く響くことを願いながら。 「気持ち良かったらいいじゃない――」 あたしのものになって。 今晩だけでいいから。 明日は、初めてのお泊りだなんて、そんな嬉し恥ずかしな告白、聞かされるこっちの身にもなってよ。 せめて、あの人が触れる前に触れさせて。 だってずっと一番近くにいたのはあたしだもの。 勝手な言い分だということは判ってる。 だけど止められない。仕方ないじゃない。 何度も深く唇を重ねあう。 次第に、ふたりの吐息が混ざり合う。 「んっ……」 苦しげな甘い声は、自分のものか彼女のものか、もう判然としない。 自然と、郁の腕も柴崎の背に廻されていた。 柴崎は郁の背に腕をまわしてブラのホックを探った。 一緒に選んだ、うすい若草色の爽やかな花柄。 ほんの少しだけレースのついた下着。 堂上教官より先にあたしが外させて頂きます。 「ね。練習よ練習。いいでしょ?」 腰から崩れるようによこたわった郁を見下ろす形で、柴崎は床に手をついた。 潤んだ目で見あげる郁の顔には、さらりと零れる柴崎の髪が影を落としていた。 否、とも諾、とも言わない。 戸惑いを浮かべた表情。 だけど、拒まれてはいない。 高潮した頬は、戸惑いながらもたしかに興奮と期待を告げている。 ブラをそっと押し上げて外す。 その下のやわらかな膨らみを弄られ、郁はビクンと身体を震わせた。 「…ぃ…やぁ……っ」 「嫌?気持ちいいでしょ」 少年のようにすっきりとやせた胸は、それでも触れば張りのある弾力を感じる。 郁の部屋着をたくし上げ、柴崎は桃色の先端を口に含んだ。 声にならない喘ぎを聞きながら、ゆっくりと舌を遣う。 為すがままにされている郁の吐息が、次第に苦しげに途切れがちになる。 オンナだから。 どこをどう触られたら「イイ」かなんて、よく分かっている。 (あの人より気持ち良くさせてあげる――) 柴崎は、自分が羽織っていたワンピースタイプの部屋着も、ボタンを外して肩口から大きくひろげてすべり落とした。 「ね。あたしのも外して?」 郁の上に覆いかぶさった体勢のまま柴崎がそう言うと、言われるがまま下から手を伸ばし、 郁は戸惑いがちに柴崎のブラを探った。 ……裸体くらい、いつもお互いに見ているはずなのに。 ほの白くきめ細かい肌をぎこちない手つきで撫で、豊かな胸の質量を感じながら、郁はその冷たい肌が次第に熱を帯びるのを知った。 体温を感じながら、きつく抱き合って口づける。 誰と付き合って、誰に抱かれても、こんな幸せを感じた事はなかった気がした。 柴崎が下腹部をまさぐると怯えたように郁の腿がこわばった。 初めてなのだから、順当な反応。 「……脚をゆるめて。怖くないから。」 そっと、腿の外側をなぜる。 「痛くするまではしないわ。練習だし。ね?信用して。」 初めてのときに自分が言って欲しかった言葉を、郁に言ってあげられる事が何だか嬉しかった。 この行為が練習なんてものじゃないことは、もうお互いに判っているはずだったけれど。 は……、ぁ… 柴崎の行為を探るように息を詰めている郁の其処に細い指を沈めると、 温かくぬるりとした感触が伝わる。 と、初めて他人に秘所を許した郁は、 「ひ…ぁあっ……やぁ…――」 泣き声ともつかない喘ぎをもらして身を捩った。 その声で、もう止まらなくなる。 「これ以上奥には挿れないから、大丈夫よ」 水音をわざと立てながら、柴崎は感じ易い部分を優しく何度も掬い上げた。 ひきつった高い音で、郁の喉が震える。 「……はぁっ、ひ…あ…あんっ……あぁ…」 柴崎の指の動きに合わせて上下する胸を愛撫すると、いやいやをするように、更に郁が身を捩る。 (や…もう、ガマンできない……っ…) もっとゆっくり郁を気持ちよくさせる筈だったのに、こんなにすぐ焦れてしまうなんて。 柴崎は性急に郁の両脚を割って腰をおとした。 自分の濡れた部分を、熱くなった郁のおなじ場所に密着させ、 「…あぁん……」 思わず声を洩らし、柴崎はきゅっと眉をひそめる。 抱かれる時にはいつも、「サービス」として心掛けていた喘ぎ声だけど。 細く括れた腰を、ゆっくりとこね回すように擦り付ける。 硬くなった敏感な芯が刺激されると、痛みとも快感ともつかない電流が、 郁の身体中に走っていく。 とろりと熱い蜜が混ざり合ってふたりの脚を伝っていった。 っ、あぁ、んぅっ……ん、ふ…ぁっ 柴崎が巧みに腰を遣うたび、快楽に抗いきれないように郁が小刻みに震える。 すらりと伸びた健康な腕が白い華奢な背に縋って爪を立てた。 力加減も忘れて喘ぐ郁の姿が更に柴崎の興奮を掻き立てる。 どこかたりない。 もどかしい。 痛みのない、快楽だけの、行為。 どうしようもないもどかしさが、余計に刹那の悦楽を増す。 やがて、自身が蕩けそうな瞬間を迎え、柴崎は淫靡な音を立てながら郁の上で激しく腰を震わせ、つよく打ちつけた。 「ゃ…あっ、し…ばさ…っ、あたし、もう…だめッ―――」 郁のその声を合図にするように、ふたりは同時に達した。 荒い呼吸がおさまるまで絡みあったままベッドに横たわる。 ふぅっと大きく息をついてようやくぼんやりと目を開いた郁と、一呼吸遅れて目を開けた柴崎の視線が合った。 「ぁあ――――……大好きよ、郁」 やっと言えた。 何度も心の中では言っていた言葉。 たったひとこと、どうしても口に出せなかった言葉。 ―――あんたのことが大好きよ、笠原――― 「使用済み」となってしまったおろしたての下着は洗濯に回されて、次の日ぼんやりしたまま郁はチェストの中に豊富にある、色気のカケラない(けど、とんでもなく彼女らしい)スポブラをつけて出て行った。 気付いたけど、言ってあげない。 せいぜい動揺していてよ。ね。 そのくらいの意地悪、許してね?
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手柴 手塚は書庫の片付けをしていた。 日も暮れて時間はとっくに 9時を過ぎている。 手塚は最後の図鑑を一番下の棚に入れると そそくさと出入り口へ向かった。 自動ドアが開いた。 関東図書基地はさすがの設備だ と改めて感心する。 書庫のカギをカウンタに戻してから 官僚に戻る。 図書館から官僚までそれほど遠くない。 夜道・・というのが きっと自分の妻には どう思われるのか。 まだ手塚は知るよちもない。 電灯の下を早足で歩く。 すると官僚の入り口に人影が見えた。 細長い影にいいラインの小さい影。 どうやら言い争いの声のようだ。 「篤さんに言われたくありませんッ!」 「お前を心配しているんだっ!気持ちくらい受け取れ!」 予想が的中して手塚はがくりと うなだれた。 「堂上一正・・」 堂上はうっと顔をしかめた。 「てッ手塚。」 郁もはたと気付いて顔をしかめる。 「何してるんですか。夜道で。近所迷惑ですよ」 手塚は二人を見下ろす角度で問いかけた。 堂上が先に口を切った。 「コイツが1人でコンビニなんか行こうとするからだっ」 なんとか言って顔が赤い。 郁も負けじと声を張る。 「篤さんに迷惑かなって・・」 後半はゴニョゴニョとしか聞こえなくなった。 二人は目を合わせて、 「すまん」 「すみません」 と頭を下げた。 手塚は微笑ましくそれを眺めていた。 なんか・・理想の夫妻だな。 俺にもこんな生活が・・ くるはずがない。 官僚の管理人室には制服をきた 若い男が居座っていた。 「よぉ手塚。遅かったな。麻子ちゃん何回か ボード見に来てまだかえってないの!って怒ってたぞ」 ヒヒヒと笑いながら言った。 「ああ、そういうやつさ。」 さらりと受け流し ボードに向かった。 手塚麻子に「帰寮」とかいてあった。 その下に怒りマークがついている。 「相当キレてるな。」 手塚は苦笑して ペンを走らせた。 「遅い。」 麻子は静かにつぶやいた。 残業だとは聞いてたけど 帰寮が9時半は遅すぎた。 「すまん」 手塚・・光は少し頭を下げた。 怖かった。ただ 光が他の女の人と話してたら・・なんて。 「アタシらしくないのは分かってる」 麻子は小さくつぶやいた。 聞こえてほしくなかったのが 光には聞こえてしまったようだ。 「泣きたいならいいぞ。でも..」 「1人で泣くな。」 うるさい。地獄耳。 しかも堂上教官に似てきて・・・ 内心そういいながら光のYシャツに顔を埋めた。
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1スレ目 189-190 「教官、折口さんから映画のチケットを貰ったんです。……ええと、その……だから、一緒に行きませんか?」 いつもの喧嘩腰な態度は何処にいったのか、ちらちらと伺うように見られつつ郁に誘われたのは週の始め。 誰もいない廊下で声をかけてきたのも、恥かしさから人目を忍んでいたのだろう。 そんないじましい態度に思わず表情が緩んでしまいそうになり、堂上は一際不機嫌な顔をした。 その表情を郁は悪い方に捉えたらしく、 「あ、あたしも最初は断ったんですよ!でも玄田隊長まで貰えって言うから仕方なく貰っただけでっ!」 こういう時の郁は喋れば喋るほど墓穴を掘る。 更にあたふたしたし始めると自分でも何を喋っているのか分からなくなっているようだが、それでも一所懸命に想いを伝えようとしている姿が可愛いと思ってしまう自分は盲目もいいところだ。 「俺でいいのか? 柴崎じゃなくて」 まるで探りを入れるような訊ね方をしてしまう自分に堂上は内心舌打ちをした。 言いたい言葉はそんなものではなく、それが素直に言えない自分が情けない。 こんな訊き方では郁が突っかかってきても当然だ。 だが郁は頬を赤くしながらも真っ直ぐに堂上を見下ろすと、 「堂上教官がいいですっ!」 あまりにもストレートな郁の意思表示に、堂上は持っていた書類を廊下にばら撒いてしまった。 そして週の終わり、二人で映画館に行った。 当たり前のように周囲にはカップル達の姿も多く、自分達もそう見えているのだろうか、なんてことを考えると今更ながら気恥ずかしさがこみ上げてきた。 先ほどから全く話しかけてこない郁を思い出し、そちらを向くと上映作品のポスターを前に固まってしまっていた。 どうしたと声をかけると開口一番、 「こ、これって、ホラー映画なんですかっ?!」 「……お前、若い女としての情操があるんじゃなかったのか?」 映画にさして興味がない堂上でも作品名だけは知っていた。 雑誌やテレビなどで盛んに今年最大のサイコホラー作品などと紹介されて いたはずだ。 その手のものに興味がないにしても名前ぐらいは知っていても不思議ではないのだが──全く知らないところが郁らしいえば、そうなるのか。 呆れたように溜息をついた堂上は、ようやく郁の様子がおかしいことに気付いた。 いつもならば、こちらの挑発に乗っくるはずだ。まさか──、 「もしかして、お前、この手の映画が苦手なのか?」 「そ、そんなこと、絶対にありませんっ!」 思わず裏返った声を上げた郁に堂上は目を瞬かせた。 そんな態度で平気だと言われて誰が信じるというのか。 だから、思わず苦笑してしまった。 ──ホラー映画が怖いなんて、お前も可愛いところがあるじゃないか。 そんなこちらの反応に気付いたらしく、郁は頑なに平気だと言い張ると、呼び止めるのも無視して先に入場してしまった。 かなり怖いんじゃないか、この映画。 煽り文句は伊達ではないようで、苦手意識のない堂上でも怖いと思わされる部分が多かった。 物語はこれからクライマックスというところだから、最後は今まで以上に怖さを煽ってくるに違いない。 ちらりと郁を伺うように視線を隣りに向けると、郁は身体を微動だにせず固まってしまっているようだった。 その様子に悪いことをしてしまったなと堂上は悔いた。 自分がからかうようなことをしなければ、郁もあそこまで意固地にはならなかったはずだ。 「大丈夫だ。俺がついている」 以前ならばその一言を口にすることさえ多大な時間が必要だったが、今は迷いなく告げられるぐらいに心の整理はついている。 膝の上でぎゅっと握られたままの郁の手に、堂上は自分の手をそっと重ねた。 同時に観客の悲鳴が一声に上がった。 クライマックスに差し掛かかったのか──と堂上が思った瞬間、いきなり身体を引っ張られた。 突然視界が遮られたかと思えば、ふにゃりとした柔らかい感触がする。 何が起きたのだと首を傾げたと同時に、自分が置かれた状態にようやく気付いた。 自分達の身長差を堂上はうっかり失念していた。 いつも自分から抱き寄せる時は、郁は自然と顔が肩に当たるよう背を屈め てくれていたおかげで今まで意識したことがなかった。 自分より背の高い郁に抱き寄せられてしまうと、堂上の顔は丁度いい具合に郁の胸に当たるのだ。 Aカップのナイチチ郁とて女性、当然のようにその感触は男とは全く違う。 確かにボリュームのある感触からは程遠いものの、ささやかな胸の膨らみは確かにあって、回される腕も男のものとは違い、酷く柔らかい。 縋られるように抱きつかれ、しかも、ほのかに石鹸の香りなどもしてきてしまい──自覚すればするほど心拍数が跳ね上がる。 それは律しているはずの自制も理性も一気に吹っ飛ぶぐらいの破壊力だった。 「バッ……笠原、離れろ!とにかく落ち着け!コラ、俺の話を──笠原っ!!」 今まで耐えていたこともあったのだろう、それが一気に決壊してしまった 郁はパニック状態で堂上の声など聞こえるはずがない。 跳ね除けようにも一体どこにこんな力があるのか、郁の腕は全く外れない。 火事場のクソ力もいいところだ。 映画の主人公よりも大ピンチに陥った堂上が解放されたのは、エンドクレジットが終わってしばらした後のことだった。